OPAC2.0ってなんだ?

図書館退屈男: OPAC2.0を想う
現状の図書館サービスが、ウェブ技術の発達に対応出来ていないというのは同感なのだが、何が足りていないのかについての議論がよく分からない。(ブックマーク経由で見つけたエントリーなので、図書館退屈男さんがどこの図書館で働いている人なのかよく分からないのだけれど、RSS配信を頑張っているというのは国会図書館の中の人なのだろうか。)
なので私なりに現状のOPACにタイする不満を、近江商人さんのWeb2.0 とは −7つの分類と要素MAPに基づいて分析してみたい。
まず比較対象となるWeb2.0とはいかなるものなのだろうか

Web 2.0の主たる構成要素と代表的なサービスは以下の7分類になる。

  1. Folksonomy
    階層分類学でなく、ユーザーの手で自由に分類する思想
    Flickr, はてなブックマーク
  2. Rich User Experiences
    AJAX,DHTML,Greasmonkey等を駆使し、ページ上で直感的操作
    Gmail,GoogleMap,goo地図
  3. User as contributor
    ユーザー体験の蓄積をサービスに転化
    PageRank,eBayのユーザ評価,Amazonレビュー
  4. Long tail
    ユーザーセルフサービスの提供でロングテールを取り込む
    Google Adsense
  5. Participation
    ユーザー参加型開発、ユーザー生成コンテンツ
    ブログ,mixi
  6. Radical Trust
    進歩的性善説、知のオープンソース
    Wikipediaはてなダイアリーキーワード
  7. Radical Decentralization
    進歩的分散志向、ネットワークの外部性
    Winny,BitTrrent

なんと図書館退屈男さんの言うようなRSS配信はほとんど触れられていない。そうなのである。RSSとは結局のところ、機械が自動生成し、勝手に読み込むための情報に過ぎない。新しいウェブ体験としてのWeb2.0にとってメカニズムの一つに過ぎず、本質的なコンテンツにはなりえない。

もちろんRSSを全否定されるものではない。本来RSSでなくてもAtomでもOPMLでも、ソフトが扱いやすい形式になったファイルならなんでもよいのだ。現状ではたまたまRSSが普及しているのだ。

では一体望まれているOPAC2.0とは何か。ここでWeb2.0的なOPACとは何かを臆面もなく、直接7つの分類に当てはめて考えてみる。

  1. Folksonomy

    階層分類学,つまり国立国会図書館分類表や日本十進法分類(NDC)ではなく、さらにはプロフェッショナルである図書館員や作者・出版社サイドによる件名ではない、利用者一人一人の手で自由にタギングする思想

  2. Rich User Experiences

    AJAX,DHTML,Greasmonkey等を駆使し、ページ上で直感的操作

    新書マップ〜テーマで探す新書ガイド〜Webcat Plus連想検索。

    本の所蔵情報だけでなく、リファレンスサービスとしての機能をインターフェースに与えるということになるのだろうか

  3. User as contributor

    ユーザー体験の蓄積をサービスに転化

    書誌情報ページにTracback urlをつける。または貸出し状況によった本のランク付け

  4. Long tail

    ユーザーセルフサービスの提供でロングテールを取り込む

    類似本の提示。Google Newsのようにキーワードごとに新着本情報を配信。

  5. Participation、Radical Trust

    ユーザー参加型開発、ユーザー生成コンテンツ

    ?。現状の段階では何が出来るのか不明。

    しかし、「欧米の図書館では大事件が起きると図書館側が積極的に動いて、参考図書情報を提供するが、日本の図書館は待ちの姿勢である」というのがよく聴かれる話。もしあるテーマに関する所蔵本についてユーザー側で生成する仕組みができるのなら、十分考えられるか。

    例えば 京都外国語大付属図書館(京都市右京区)が環境問題に関する和書のデータベース を利用者が積極的に作るための、wikiのようなものと、内容の吟味をするためのフォーラムの提供など。

  6. Radical Decentralization
    進歩的分散志向、ネットワークの外部性

    大学図書館なら各研究室や、個人のデータベースの公開が有益かもしれない。そのデータに基づいた購入希望図書などが生み出されるならば相当使えるネットワークになるだろう。

    青空文庫など著作権フリーのデータの、P2P配信や、OPAC自体のP2Pへの移行により、データ自体の遍在化によるメリットもある

    管理ソフトの開発などが望まれる。

現在、MyLibraryのようなパーソナライズサービスが各社で開発されているが、Web2.0的とは言い難い。上記のサービス自体は現在様々なソフトウェアやウェブサービスを使えば、今からでも可能なことがほとんどだと思う。しかし、書誌情報のデータベースに対するアクセスが難しい今、図書館側の歩み寄りが必要なサービスであることも確かだ。

図書館側の姿勢は変わりつつあると思うが、さらなる変化を一利用者として希望する。