セックスの人類学

公開シンポジウム「セックスの人類学」の発表を元にしたセックスの人類学が刊行された。シンポジウムに参加していなかったが、気になっていたので、本屋で発見して購入した。

以下読んだ論考についての書評を随時掲載する。

目次

序 「セックスの人類学」手ほどき 奥野克巳
第I部 セックスの霊長類学/人類学
1 ニホンザルのセックス〜同性愛行動から見えてくる「能動的受容性」 竹ノ下祐二
2 ケニア・ルオ社会の「儀礼的」セックスとは 椎野若菜
第II部 セックスと社会
3 セックスをめぐる葛藤〜オランウータンを中心に 久世濃子
4 セックスをめぐる男性の「不安」〜パプアニューギニア・テワーダ社会から
5 男が戦いに行くように女は愛人をもつ〜
  南部エチオピアの父系ボラナの結婚と紺外のセックス 田川玄(←タイトル長すぎ!)
第III部 生殖から遠いセックス
6 ヒジュラとセックス〜去勢した者たちの情交のありかた 國弘暁子
7 「遊び」としてのSMプレイ〜「おんなのこ」の視点から 熊田陽子
第?部 セックスと身体
8 性器の正規利用とは?〜鯨類のセックスのユニークさを概観しつつ 篠原正典
9 セックスと性具〜プナンのペニス・ピン 奥野克巳
10 越境としての「性転換」〜「性同一性障害者」による身体変工 市野澤潤平

セックスの人類学 (シリーズ来たるべき人類学)

セックスの人類学 (シリーズ来たるべき人類学)

奥野克己 「セックスの人類学」てほどき

フーコー的なセックス、つまりもともと私的なものであるセックスに対して、国家や強者による権力が踏み込むありようをとらえるのとは異なる視点ではなく、霊長類や鯨類の繁殖につながる性行動や繁殖につながらない性行動も視野に入れながら、生物が存在し続けていく上で無視することができないセックスの本源的なものを探るために、まさにセックスの場そのものから<社会性><非・生殖性><身体性>を掘り起こしていくという宣言。


これまでも性の人類学―サルとヒトの接点を求めて (SEKAISHISO SEMINAR)ジェンダー人類学を読む―地域別・テーマ別基本文献レヴューなどがあったが、新しさという点では鯨類の論考があることだろうか。鯨を取り込むことでどう新しいものが現れるのか。期待したい。