ダーウィン特集雑感

現代思想2009年4月臨時増刊号 総特集=ダーウィン 『種の起源』の系統樹

現代思想2009年4月臨時増刊号 総特集=ダーウィン 『種の起源』の系統樹

【テクスト】

種が変種を作り出す傾向について、および変種と種が 自然による選択によって永続化することについて / チャールズ・ダーウィン (訳・解題=新妻昭夫)
久しぶりにダーウィン本人の(翻訳だけど)文を読んだ。わかりやすさを優先させて中立的な形質に関する議論はない。

【討議】

ダーウィン的仕事 / 渡辺政隆茂木健一郎
ダーウィンが主張したことと、矛盾しないから同時に語られている他の説をひっくるめてダーウィニズムを主張することの気持ち悪さを感じた。今西説みたいのだって矛盾しないというのなら、今西だってダーウィニズムですと主張したらいいじゃないか。

ダーウィン

日本におけるダーウィン理解の誤り / 松永俊男
自然選択だと、負の自然選択の場合にみられる中立的な形質だって残ることを含めなくなるから自然淘汰が好まれるんです
ダーウィン・マシンとベルナール・マシン / 長野敬
”バラバラ還元主義”批判だけど、のらりくらり逃げる人たちだから言葉は届かないと思う

【進化論】

ダーウィンが言ったこと、言わなかったこと / 池田清彦
典型的なダーウィニズムの人は怒りそうな論調。説得力に乏しいかな
ネオダーウィニズムの職人が見る非ネオダーウィニズム的世界 / 河野和男
カブトムシの進化から、種分化→属形成→科形成という議論に疑問を投げかけたもの。カブトムシと進化論―博物学の復権を読まなくてもいいかなと思える密度w

【形態/発生学】

進化する 「手」 と形態学の終焉 ダーウィンとその周辺 / 倉谷滋
あとで

【地質学】

チャールズ・ダーウィンと地質学 / 川上紳一

生態学

ダーウィン的生物体の変奏と変換 ミミズと蘭と蜂 / 遠藤彰
可児藤吉川那部浩哉の議論をもっとしないと、日本人の議論が全然見えない。なくてもおもしろいんだけどさ。
行動を生け捕りする ダーウィンのミミズの研究 / 染谷昌義

【動物学】

鳥のさえずり行動と四つの質問 動物行動学における進化論 / 加藤陽子+山内肇+松永英治+岡ノ谷一夫
んー、微妙。鳥の歌の話としてはおもしろいけど。

【生命システム】

オートポイエシス再考 自律運動する油滴と生命の進化 / 池上高志
わかりやすいオートポイエーシスの話。でも油滴から生物を想像するのは難しいかな

【人間】

ダーウィンにおける性選択(sexual selection)の問題 / 斎藤光:微妙。性選択と種分化の議論もないし。[asin;4861101808:title]の方が挑戦的かなぁ、

【社会】

社会ダーウィニズムという思想 / 北垣徹
微妙

【人類学】

アメリカ人類学にみる進化論と人間の 「差異」 大西洋を往来した人種論 / 竹沢泰子
差別より進化心理学の動向とアメリカ人類学の話の方がよかっとおもう。

【芸術】

Art History と Natural History 種・様式・シークエンス / 田中純
美学におけるダーウィニズムのことらしい。

【哲学】

「エボデボ革命」 はどの程度革命的なのか / 戸田山和久
エボデヴォ革命の歴史のお勉強に。
浮遊する個体 ドゥルーズ 『差異と反復』 第五章読解 / 檜垣立哉
なくてもよかった
プラグマティズムと超越主義の自然観 Solution から Dissolution へ / 齋藤直子
よくわからん

【進化論ブックガイド】

他の論考で触れていない部分にも目を配っていていいんじゃないでしょうか。

追記

id:shinichiroinaba「(時間の無駄だから暇な人以外は)読まなくていい」なのか「(時間と金をどぶに捨てる羽目になるから)読んではいけない」なのか、どっちだ。

長野の「生理学だぜわっしょい」、遠藤の「生態学だぜわっしょい」、戸田山の「発生学だぜわっしょい」の三小論は近年の文献をちゃんと読んでいない人には、時間節約的にもおすすめです。
まぁ暇じゃない人は読まなくていい論文や、読む価値がない論文もいくつかあったけど。

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