エミリー・オスターの研究に対する意見を中心に

 エミリーの同僚さんにヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検するの下敷きになった論文を紹介していただいたので読んでみた。これを読む限り、ヤバイ経済学はかなり一般向けのことを書いているのではないかと思う。少なくとも山形さんが山形浩生 の「経済のトリセツ」  Supported by WindowsLiveJournal - 「女性の論理」でエイズの話は変わるか?でしたような話にはなりにくい。筆が滑ったと言うよりも、数字をきちんと書いていないのだろう。
 特に一番気になるコンドームの使用状態に関しては、未婚者に限ってのみ行っており、HIVの感染率と、ゴムの使用について相関が出ていない。またゴムの使用はHIV感染率と資産や余命の相互作用とも有意な関係にない。ということはみんな元気な子供が欲しいけど、希に間違いがあるとか言う以前に、感染率の高さを裏付けるぐらい生でしていると思っていた方がよいのではないだろうか。
 そして単身者で数少ない相関が出た項目というのが、余命とHIV感染率の相互作用と、リスキーな女性の交渉との関係であった。
 他の項目で気になるのは、教育と知識の問題である。知識とはコンドームを使う意義と不特定多数とのセックスの危険性のことであるが、それ以外の教育の場合、複数パートナーを持つかどうかと負の相関があるようだ。しかし、女性の方が教育を受けておらず、浮気をあまりしないと言う結果もあり、不思議な結果である。
 未婚者のコンドームの利用率が芳しくないとなると教育が無駄とか知識が無駄と言うよりも、どのような教育が行われているのかが非常に問題だ。
 さてエミリーの同僚さんがおっしゃるように、余命は大抵の項目で有意な値を出している以上、この値の解釈が中心になるというのは同意できる。
 けれども、余命がある人が合理的に振舞っているという結果があるというのは、勇み足ではないだろうか。未婚の行動からポジティブに言えるのはせいぜい、余命の短い未婚男性が危険性の高い女性と付きあうという話である。調査を受けた男性の平均年齢が高いことから、婚期を逃した貧乏男である可能性が高い。同時に彼が、有意に生でセックスをしたかという結果はない。
 膨大な結果の中には読みおとしがあるとは思うが、山形さんが主張するような根拠は見つけられなかったというのが結論だ。