昨日の続き

梅太郎さんが詳しく解説を入れているのでもういいかなと思ったものの、0.1%当たりの議論がちょっと気になったのでもう少し説明。
警察発表にある平成16年の全刑法犯検挙人員約39万人のうち、子ども対象・暴力的性犯罪の検挙人員466人が占める割合は0.1%にすぎないことを考えれば、何らかの犯罪経歴がある者のうち、極めて少数の子ども対象・暴力的性犯罪の経歴を有する者が、同じ子ども対象・暴力的性犯罪の4割近くを引き起こしていることを示している。というのは犯罪Aに占める同一犯罪についての犯罪者率の期待値*1は、犯罪Aが全犯罪件数に占める割合と一致すると主張しているわけで、非常にナンセンスな主張と言わざる得ない。確かにミスリードと思わしき挿入極めて少数の子ども対象・暴力的性犯罪の経歴を有する者ががあるのは確かだが、ここら辺はご愛敬である*2
この発表で何が残念かというと、防犯には再犯者率が重要であるということを主張するためにわざわざ図(図表3)まで載せていることだろう。ナンだろうか、自信たっぷりな感じが痛ましい。ただ、このことについて何も触れていないマスコミ各社も同様に一体どうなっているのだろうか?

ついでに

図表4から再犯率を出してみることにする。実際にやるのは前回と同じです。
調査対象は、昭和57年から平成9年までの間に警察が検挙した子ども対象・強姦の被疑者527人のうち追跡可能な506人について、検挙後平成16年6月30日までの間における再犯の状況ということで、最少七年以上出獄・もしくは無罪で釈放されたことのある人間の再犯性と言うことになります。ただし初犯時における容疑は全て強姦です。また、被害者が子供の場合は()の値となります。

暴力的性犯歴なし:362人

調査期間以前に前科として女児対象強姦しかない人です。再犯した場合は二犯ということになります

  • 再犯なし:209人
  • 強姦・強制わいせつの再犯あり:52人(25)
    • 強姦:24人(9)
    • 強制わいせつあり:38人(17)
    • 強姦及び強制わいせつあり:10人(1)
  • 再犯率は 52/362=0.144、強姦に限れば 24/362=0.066
  • 子供対象にすれば 25/362=0.069 そのうち強姦は 9/362=0.025
暴力的性犯歴あり:144人

どうやら二回以上すでに性犯罪を繰り返した人のことのようです。内訳は以下のようになります暴力的性犯罪とは強姦、強盗強姦、強制わいせつ又はわいせつ目的略取・誘拐ということなので、おそらく初犯時の女児強姦に加え、対象を選ばない暴力的性犯罪を複数回(ただし、強姦は含まなくても良い)したことがある人間と言うことになります。

指摘がありましたとおり、調査期間以前に前科として暴力的性犯罪を持っている人間144人についての再犯状況と言うことになります。調査期間中に再犯(二犯以上)を起こした場合については不明です

  • 再犯なし:57人
  • 性犯罪の再犯(累犯3以上と言うことになります)あり:51人(22)
    • 強姦:23人(6)
    • 強制わいせつあり:38人(18)
    • 強姦及び強制わいせつあり:10人(2)
  • 再犯率は 51/144=0.354
  • 子供を対象にする場合、ただし二犯目の犯罪についてはよくわからないがその場合の再犯率は 22/144=0.153

従って、二犯持ちの人間の再犯率は、算出の仕方から胡散臭いものと言うことになります。一般的な間隔としては対象を絞らなかったり、わいせつ目的奪取や誘拐などというものを考慮に入れるなら、初犯の段階から入れてしまえと思うのです。再犯性が膨らんでいるような数字にするために、非対称な関係にしてしまっており信頼出来ません。

もちろん警察庁の目的である、ところの一度強姦した人間の性犯罪一般に対する再犯性を見ると言うところに関してはそれなりに許容出来ますが、あまりにもやり方が杜撰です。例えば、今回の発表からは強姦をした人間が、第二犯としてわいせつ目的略取・誘拐をどの程度したのかという情報は提示されていません。また、第三犯にわいせつ目的略取・誘拐があったのかどうかといったことも同様です。すなわち主張と行動が一致していない非常にいい加減な発表と言うことになります。

それにしてもなんで一般的な意味での再犯率を算出しといて、触れないようにするんだろうねぇ。どちらにしろ母数が少なすぎて犯罪者全体の傾向なのか、たまたまのけっかなのかさっぱりわからないので、数字のみで議論するのが難しいと思うのだがどうだろうか。

*1:当然皮肉である

*2:ry