『代替医療のトリック』感想

正直、サイモン・シンの修辞を使えば「現代医療のトリック」という本を一冊ぐらい上梓するのはさほど不可能ではない。少なくとも1980年代ぐらいまでの疫学的な議論を駆使すれば、イリイチ的な反病院論がいまなお有効な警鐘であることを示すことは不可能ではないと考えてしまった医療社会学や医療人類学まわりの人間は少なくないだろう。

そう考えてしまったことの一つには、シンの記述が代替医療の症例への効果(結果)が明らかでないということに収まらず、代替医療創始者の人格面や歴史的不確かさ、従事者の熟練度まで触れてしまったことにある。これはいわゆる制度医療にも当てはめることが十分に可能である。現代医療にだって運用次第では、患者に対して危険な状態になるということは常にある。もちろん代替医療と呼ばれる領域には、法の不整備や教育機関の未成熟という側面が失笑するほど存在するのは確かである。

ところで、私はド田舎での調査中に病気とおぼしき不調を感じるときは、まず手持ちの抗生剤や対処薬を使うが、改善の兆候がないときは病院よりも、隣人に民間医療を依頼することにしている。何故なら病人の身で25kmの道のりを自力で走破する自信なぞないし、行ったところで処方される薬は既に自分が試した薬以上のものが処方される見込みはないから((そこから大病院に搬送されたら、大丈夫かもしれんが)。まぁ大怪我をしたらヘリを呼んできてもらう手はずは整えているけど。

つーかマラリア持ちだから日本国内でも、高熱が出たとき関西医大に這っていかないと誤診される恐怖があるなぁ

代替医療のトリック

代替医療のトリック