台湾征服戦争とNHK

番組内では日台戦争だったが、このさいどっちでもいいか。

許世楷の『日本統治下の台湾 : 抵抗と弾圧』を読むと、NHKスペシャルJAPANデビュー」で取り扱わなかった皇軍の残虐行為がいくらでもあることがわかる。むしろ匪徒厳罰令*1は慣例を明文化しただけである種の法治主義があり、帰順式でだまし討ちをしたり、良民なしと吹いて無差別焼き討ちや裁判をせずに降伏兵(とばっちりを受けただけの無実の人を含む)を現場で斬殺していた桂・乃木時代よりましな話とさえ言えるだろう*2.

ところで、後藤新平が台湾の経済を成長させたのだということについて、黄文雄のホラ話を真に受けている人が多いようだが、そもそも清朝時代から穀倉として、阿片が散々蔓延していた時代にすら台湾は輸出黒字地域だった。*3それを官僚は汚職で私腹を肥やすは、日本人商人は詐欺を働きまくっても知らぬ存ぜぬ、さらには1898年までは台湾人は国籍不明であるとして、鉱山の所有権を認めずに勝手に取り上げるわと抵抗運動を強化させ、その反動で散々民家を焼き討ちしまくって労働意欲を低下させて、という見事な負のスパイラルを実践していたのが総督府だった

さて、児玉と後藤は何をしたのか?というのと、もちろん硬軟折衷の懐柔策はもちろんだが、桂太郎が提案*4して失敗した、警官や官僚に台湾語を習得させたことが一番なのではないだろうか。実は樺山時代からそれまで、二重通訳(日本語-北京語通訳が北京語-台湾語通訳に伝えていた)による統治をしており、全然話が通じていなかった。それを改善することに成功し、日本人の不正も取り締まるようになったので、統治に対する信頼を生じさせたのだろう。

しかしこう書いてみると実践したのは児玉だとしても、実は桂太郎の提案ばっかでNHKは桂を無視しすぎじゃね?どちらかといえば鉄道の延長や港湾整備も触れられている後藤はかなり待遇がいい。

さて話を戻して経済について言えば、まぁ台湾総督府が自立できたのは、そもそも台湾と台湾人の旺盛な生産力だったんじゃねーの。ということ。これは矢内原の『帝国主義下の台湾』を読んだほうがよいだろうけど。

日本統治下の台湾―抵抗と弾圧

日本統治下の台湾―抵抗と弾圧

矢内原忠雄「帝国主義下の台湾」精読 (岩波現代文庫―学術)

矢内原忠雄「帝国主義下の台湾」精読 (岩波現代文庫―学術)

*1:土匪帰順法は阿川光裕と白井新太郎の提案でどうやら別物らしい。

*2:え?慣例を明文化したほうがやばいだろって?そうともいう。

*3:そのうち砂糖の出荷は江戸時代から日本向けだったので和菓子の母親と言えるだろうか。

*4:桂は台湾語話者育成の必要性の他、武断政治への警告、文化の差異を把握すること、現地人の教育などを訓示した