大門先生、東アジア共同体を現実的に語る

適当に検索していたら若干古いけどおもしろい議論に当たったので引用。第164回国会 国際問題に関する調査会 第6号(平成十八年四月十九日)

○会長(西田吉宏君) 次に、大門実紀史君。
大門実紀史君 今までの参考人質疑踏まえて、私も東アジア共同体のこれからの方向について絞って意見を述べたいと思います。
 東アジア共同体はこの調査会で二年にわたり議論がされてまいりましたけども、いろんな議論がありまして、APECだけでいいんじゃないかと、東アジア共同体そのものが必要なのかという議論から、いろいろ出ましたけども、私、必要だという立場ではおりますが、そうはいっても議論百出のテーマでございました。それが緩やかなものなのか、EU型を目指すのか、あるいは経済協力に絞るのか、安全保障も含めるのか、あるいはアメリカを入れるのか、アメリカ抜きなのか等々、いろいろ、さらに日中間の歴史認識問題も議論されて、大変混沌とした議論になっているような気がいたしますけども、余り考え過ぎちゃうと、いろんなことを考え過ぎると、といいますか、先にビジョンを考え過ぎるとこういうものは余り進まないんじゃないかというふうに私は現実的にとらえておりまして、お互い利益になることを進めていけば、なるようになるといいますか、自然に形はつくられるんではないかと思います。
 そういう点では、経済面での共同体に行く前の連携というものが、実際にも進んでいるわけですが、よりどころで物を考えていけばどうかと思いますが、ただ、FTAとかEPAを幾ら重層的に結んでも、それが共同体につながるとは限りません。私は、むしろ通貨、金融面での今進み始めている協力を拡大すべきではないかというふうに思っているところでございます。

http://suematsu.org/kokkai/chousakai/2006_0419.html

なんでこんなに現実的な提案なんでしょうかね。これ、リーマンショックの前なんですな。

農政面での共産党の主張

しかし、いま日本で学ぶべきは、イギリスだけでなく、EU加盟国が、お互いの農業の条件を尊重して、農業分野の政策協力を強めながら食料自給率をEU各国がともに高めてきたという「共通農業政策」の経験です。

 たとえば、一九六一年から二〇〇〇年へかけての食料自給率をみると、フランス(九九↓一三二)、ドイツ(六七↓九六)、イギリス(四二↓七四)、オランダ(六七↓七〇)、スペイン(九三↓九六)へと軒並み引き上げています。ちなみに、同じ時期の日本は、(七八↓四〇)と大幅に引き下げています。

 アジアでも、各国の「食料主権」を尊重して、アジア地域全体の食料供給力の向上をめざして、各国農業の再生・発展にともに協力することが必要でしょう。(友寄英隆)

経済時評/農業再生と東アジア共同体

なんかと合わせて読むと非常に味わい深いですな。一部の国士様が怯える食料枯渇や中国のヘゲモニー国家化なんかより見通しがあると思います。

 そもそも、東アジア共同体みたいな構想が出たのは、九七年のアジア通貨危機が発端でございます。あのときにASEANの国は、アメリカのファンドを含めたアメリカマネーに、ドルペックを取っていたということもありまして、やられたと、アメリカにやられたと。それがあってアメリカから相対的な自立を確保したいと。ですから、APECではなくてというところから出発したのがそもそもこの東アジア共同体の議論でございました。その後、もちろんIMFが入って、IMFプログラムに対する反発、つまりそこでもアメリカに対する反発とかがあって、東アジアの国だけでという流れが始まったわけでございます。ですから、APECでということにはそもそも議論からならないスタートだろうというふうに思っています。
 で、その中で日本は特別な協力をしてきたわけです、この通貨協力面ではですね。アジア通貨基金構想が出ましたけども、これはアメリカとIMFの反対でつぶれました。九八年には新宮澤構想を打ち出して、三百億ドルの資金供与をアジア通貨危機下でやったと。二〇〇〇年にはチェンマイ・イニシアチブですね、これはいざというときの為替資金をスワップで準備すると。これにも協力、日本が大変イニシア取ってお金も出していると。あと、アジア債券市場の育成ですね、これはアジアの貯蓄をアジアの投資に使おうという構想ですが、これも日本が非常に、日本の財務省が頑張っているわけです。
 こういう金融通貨協力を更に進める、これは正に共同体的な枠組みですから、これを進めることが今後の共同体の礎を固めて広げていくことになるだろうと思います。で、これは二つの日本の国にとって有効な面があると思っております。
 一つは円の国際化。つまり、これからは世界の通貨というのはドルとユーロとアジア通貨に収れんしていくんではないかと言われています。恐らくその方向になると思いますが、そのアジア通貨の中で日本の円がどういう影響力を持つかと。円の国際化まで行くかどうかは別として、円の影響力をそこで高めておくというのは、これは経済的な意味の国益には間違いなく沿うわけでございます。そういう点で、この通貨金融協力、特にチェンマイ・イニシアチブとアジア債券市場の育成に日本が更に力を入れていくということは、その円の国際化、円の影響力をアジアの通貨の中で、結果的には通貨バスケットになるか何か分かりませんが、とにかく円の影響力を強めるという点では非常に国益にもつながると思います。
 もう一つは、アメリカがアジア共同体を非常に嫌がっている理由は、結局、日本と中国がドルをたくさん買っておりますけども、ドルから相対的にアジアマネーが自立をしていくと、これを一番嫌がっているわけでございます。したがって、アメリカはドルを垂れ流しする、赤字を垂れ流しするというところで自国の経済を回しておりますから、ドルを買ってくれなければ、ドルから離れられると非常に困るわけです。しかし、それは一方、ドルがいつ暴落するか分からない、いつ下落するか分からないという危ないものを含んでおります。いわゆるドルリスクでございますけども、それを中国も日本も今抱えているわけです。そういうドルリスクから相対的に自立していくという点でもこのアジアの通貨協力、アジア内での、域内での通貨協力というのがドルリスク回避という点からも国益に沿うというふうに思います。
 そういう点で、あれこれの議論ありますが、FTA、EPAの議論が先行しておりますけども、余り取り上げられておりませんが、通貨金融協力に力を入れることが一番現実的な共同体をつくっていく方向になるんではないかという意見だけ表明しておきます。
 以上です。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/164/0023/16404190023006a.html

共産党の議員が財務相を褒めているのを初めて見た気がする。
後半とか国益連呼だし、なんなんでしょうね。

で同じ調査会で自民党の末松議員

○末松信介君 失礼いたします。
 私は、対アジア外交の中で中国のことについて触れておきたいと思うんですけれども、今、澤先生からも話がありましたし、大門先生も、共産党でなければ、いい、大変いい話でなかったかなと思うんですけれど。
(略)
私、大門先生が以前APECでいいじゃないかと言ったんですけれども、まあいろいろと考えていって、東アジア共同体というのはやはり経済の問題ある、環境の問題ある、安全保障の問題ある、もちろん食料の問題とかいろんな問題もありますので、それぞれ分野別でやっぱり語っていく上ではこれはいいことかもしれないと。ただ、APECとの違いというのが、アメリカを入れるか入れないかというところにやっぱり一番の違いが出てくると。だから、アメリカを入れない東アジア共同体というものが好ましいと、私はそう思います。その点でどうかというところから今後検討を重ねていきたいと思います。

メロメロですね。わかります。