東アフリカの植物燃料事情
復帰第一報がこれなのはどうにも重たい気がするが、ブログは時代の記録ということなので、私がみた東アフリカの某国でのバイオフューエル事情を書くことにする。といってもジャトロファという植物に関わる話がメイン。
油脂植物であるジャトロファ(和名:ナンヨウアブラギリ)は、まだ多くの日本人が知らない植物だと思うが、原産地は南米であり、成長が早く種子に大量の油が含まれていることから、バイオディーゼルとして非常に期待されているらしい。なお同じトウダイグサ科で東アフリカ産のトウゴマ(別名:ヒマ)からとれるひまし油は、食用には適さないながらも旧大陸各地で伝統的に下剤や燃料としても使われている。ジャトロファもそこら辺は同じで、食用には期待できない。
さて南米から東アフリカにいつ入ってきたのは、同じトウダイグサ科で南米原産のキャッサバと同じ位なのかとか、最近生物燃料屋さんが持ち込んできたのかとかは知らない。しかし、どうも各地の部族語や共通語であるスワヒリ語にジャトロファに相当する語があるので、二、三百年以上は薬などに利用してきた歴史があるようだ*1。ただ魅力的な換金作物とはこれまではみなされていなかったようで、未だに「昔からたくさんつくっていました」的な発言は聞いたことがない。
そのジャトロファだが、既に東南アジアである程度の栽培実績をあげたということで、ヨーロッパやアジアの生物燃料屋さんからアフリカに生産増大のオファーがかかっているようなのだ。
ジャトロファの生育上のメリットは以下の通り
- 酸性泥炭地でも育つ(好適土壌が酸性とか泥炭地というわけではなく、選ばないということ)
- 乾燥地でも育つ(水が多い方がよく育つ)
- 成長が早く、栽培一年目から種が取れる(寿命は10数年?)
なんだか鬱陶しい外来種の特徴を書き記した気がするのだが、栽培地の近くで野生化したジャトロファの密生群などをみなことはなく、セイタカアワダチソウのようなアレロパシーなどもないようだ。なお一部の推進派は防砂林や緑地化にも使える万能選手のように記述することがあるので、うさんくさい。
ジャトロファについて一通り記述したので、栽培する側の動向に移ろう。
半年前この地に来た時、既にジャトロファ熱は盛り上がっており、既に苗の植え付けを始めて、農地を確保した人や取りあえず試験的に一本植えてみたという人に何人も会った。
さて現在ジャトロファは種が品薄で、市場価格が跳ね上がって種が200円/kgなどという噂もちらほら伝え聞く。しかし企業なんだかNGOだか知らないが地域における推進団体による、実際の最低買い取り価格は未だに発表されず、何年継続するのか先が見えない。燃料として軌道に乗せるにはこの10分の1以下に価格を抑えないと、油の多い種といっても加工費・輸送費などから加工業者が商売的にペイするとは思えない。
農民は最低でも種20円/kgぐらいは期待したいようだが、この価格は一般の食料と比較するとメリットが小さく、転作してまで収入増加期待した小農には期待はずれの値段である。
大規模農園を抱える農業者が転作する場合や、手つかずもしくは低開発地域を開墾する場合のコスト・ベネフィットはよくわからんが、そもそも十分な品質かつ収量を期待するには非農地であった後者はあまり期待できない。小農にはきついか。
おぉ忘れていた。ジャトロファは貧相な土壌でも生えるのが売りになっているけど、どこでも大量の収穫が安定して期待できるわけではありません。品種も多種多様で、どの土地にどの品種が適当かとかほとんど研究が進んでいないらしく、各地で種を購入した人は貧乏くじな品種を既に引いているのかも。
という疑念が沸々と湧いてきたので、いろんな人間に聞いてみるとどうやら現地の人間も期待と不安を抱えており、外から見たら奇妙な熱にうなされているといえるだろう。
まぁ私なら、地球温暖化抑止の旗頭みたいな胡散臭い梯子がいつ外されるのかわからない生物燃料に投資するより食料をつくるかな。東アフリカで土地と水が十分な地域なら、低地は米・高地はコーヒーの二択だと思うんだけど*2