ポロニウムの害

マイルドセブンに「ポロニウム」 JT「入っていないと言い切れません
という記事を読んで、片っ端から検索してみたのだがよく分からない。
wikipediaには

汚染物質として見つかったり、タバコの煙にも極微量に含まれており、出所はタバコ栽培に多用される化学肥料(リン酸肥料)の材料であるリンに不純物として含まれるウランだとする論文が提出されている(その場合は野菜などにも微量ながら含まれていることになる。)。喫煙者の被曝量が、非喫煙者よりも多いため、肺がんの原因のひとつとする。[2]

[2]Kilthau, Gustave F.. "Cancer risk in relation to radioactivity in tobacco". Radiologic Technology 67: 217-222.

とありリン酸肥料が問題なら、他の作物だってやばいよね。気にすんな的なことが書かれている。山中登志子お得意の銘柄を指定して無理矢理ないちゃもん話かと思えばいいのだろうか?
お役所には

リン鉱石を利用する産業活動では、リン鉱石に含まれる238Uとその壊変系列の核種が環境中に放出され、公衆被ばくの原因となっている。リン(P)の生産工程で河川などに放出される排水中の天然放射性核種は、水産物の摂取を通じて、年間60〜150μSvの被ばくをもたらすと推定されている。この線量は、主にポロニウム210(210Po)に由来する。生産されたリン酸肥料中の238Uや226Raは、施肥された畑の上の空気吸収線量を増加させるとともに、その畑で生産された農作物の経口摂取による内部被ばくの原因にもなる。被ばくの大きさは約2μSvと推定されている。リン酸肥料の製造過程ではリン酸石膏が副産物として生産される。ヨーロッパや日本の建設産業では、セメントや壁板、しっくいの製造に天然石膏の代用品としてリン酸石膏を利用している。リン酸石膏が建材に利用されている家屋でのラドンの壊変生成物の吸入と外部被ばくによる線量は年間約10μSvと推定されている。

という記述がある。リン酸肥料を利用した作物を摂取した場合の被爆量は、リン酸石膏の家屋で生活する場合の5分の1か。数字があると比較しやすいので覚えておいた方がいいだろう。まだタバコとは関係ないな。
なかなか頑張った解釈をしているのはこの方だ。

問題は、このNYタイムズ記事ではポロニウムがいったいどうやってタバコに混入したのかということに口を濁していることです。リン酸肥料に含まれているから土中から吸収されたと推測していますが、ローザリー・バーテルが指摘しているように、ウラニウムから崩壊したラドンガスがタバコの葉に吸収され、さらに崩壊してポロニウム210になったと考えられるのです。つまり、大気中のウラニウムが元凶なのです。ということは、この60年間、数多くの核実験と世界中の原発そして最近の戦争で使われた劣化ウラン兵器によって世界中で拡散したFallout(放射性降下物)が、まわりまわってタバコに入ったのです。このことは誰も口に出しませんね。本当の問題はタバコだけのことではないからです。

強調は私。リン酸肥料に混入したウランだけじゃ足りないんですか。ただ本当の問題が劣化ウランなどの放射性物質を利用とした平気なのか、それが他の植物にも影響を及ぼすといいたいのか分かりませんが。

などとエントリーを推敲していたら流石id:finaleventさん。
Tobacco Smoke Carcinogens and Lung Cancer -- Hecht 91 (14): 1194 -- JNCI Journal of the National Cancer Instituteという記事を見つけていた。
なになにLevels of polonium-210 in tobacco smoke are not believed to be great enough to significantly impact lung cancer in smokers なので、タバコの煙中のポロニウム210なんて肺ガンに対して有意なインパクトねーゾと。根拠となる論文はHarley NB, Cohen BS, Tso TC. Polonium-210: a questionable risk factor in smoking related carcinogenesis. Banbury Report 3: a safe cigarette? Cold Spring Harbor (NY): Cold Spring Harbor Laboratory; 1980. p. 93-104. だそうで。
もう少し先の論文中のポロニウムの箇所を読んでみよう。

Uptake of polonium-210 has been examined in bronchial tissues of smokers and nonsmokers; some studies [reviewed in (38)] have shown higher concentrations in smokers. Overall, there is considerable evidence that pulmonary carcinogens in cigarette smoke are taken up and metabolized by smokers (as well as by nonsmokers exposed to ETS), but there are still large gaps.

(私訳)
ポロニウム210の摂取量に関しては喫煙者と非喫煙者の気管支で計測されている。喫煙者に高濃度で検出された研究もある.総じてタバコの煙の中に含まれる肺に対する発ガン性物質は吸収され、喫煙者および非喫煙者によって代謝されると考えられる証拠がある。しかしまだ大きなギャップがある。

だと。全文読んでないので適当だが、ポロニウム210がタバコに含まれていようと、タバコの煙に含まれる発ガン性物質の一部に過ぎずインパクトも小さいと言うことのようだ。
大切なのは英国で発生したポロニウム210事件に関する情報 : 緊急被ばく医療研究センター : 放射線医学総合研究所にもあるように、

  • 二次汚染の危険性が低いと言うこと。
  • 自然界にも存在しており、食品等を通して、我々は絶えず、摂取している

ということをキチンと理解することだろう。