エイズ問題書き直し
あまりの悪文(id:nabeso:20061123)を治す。
山形浩生さんの意見(山形浩生 の「経済のトリセツ」 Supported by WindowsLiveJournal - アフリカのエイズの新しい分析……それと経済学の何たるか。)の要点というか、エミリー・オスターの論文の(Esquire:Feature Story:Three Things You Don't Know About Aids In Africa)要点は以下の通り。
- the major difference lies in transmission rates of the virus(他の性感染症の影響によってウイルス感染の割合が違う)
- bias in who is tested(サハラ以降の羅漢率の高さは、検定の問題に過ぎない)。My work suggests that the HIV rates reported by the UN are about three times too high(実際の感染率はUKの報告の三分の一)
- , if income and life expectancy in Africa were the same as they are in the United States, we would see the same change in sexual behavior�and the AIDS epidemic would begin to slow.(収入の多寡によって、性行動は異なってくる)
このことを検討するために、まずは一つデータを提供したいと思う
404 Blog Not Found:「どうせ」の経済学から、Life expectancy - Wikipedia, the free encyclopediaを引用しておこう。本人かどうかはともかく、山形さんもコメントしていることだし。
少しは頭を使ってくださいよ。生でセックスしたところで、HIV に確実に感染するとは限らないんですよ。(それとも一発やったら百発百中だとでも思ってたんですか?)だから 10 年後に苦しむ確率は、もともとそんなに高くはないのです。
だからなぜいま自殺しないかといえば、いま自殺すれば確実に死ぬのに対して、生で一回やったくらいでは10年後に AIDS で死ぬ確率はきわめて低いからです。
たばこを吸ってる人は30年後に肺ガンで死にやすくなりますが、かれらになぜいま自殺しないかきいてごらんなさいな。
Posted by 山形 at 2006年11月22日 22:08 またサハラ以南の人々の寿命ですが、お示しになったグラフで見ても、もともと明らかに エイズとは関係なく他の地域より短かいのはわかるでしょう。それが(おそらくは)ぼくの紹介したような原因で、他の地域より高リスクの活動にいそしむようになったために、さらに短くなっているのです。まさにエミリー・オスターの説明通りです。
それまでは「10年後には生きているかわからん」と考えていた人でも、実際には15年生きたりした人もいたわけです。それが、AIDSのおかげで12年しか生きられなかったり、8年で死んだりするのです。それが寿命の短縮としてあらわれているのです。
Posted by 山形 at 2006年11月22日 22:20
あまり確信が持てないのだが、このexpectancyって普通に訳したら平均余命なんだろうけど、0歳の平均余命=いわゆる平均寿命じゃなかろうか?基準年齢が書いてない上に、酷いところ(サハラ以南)でも45歳前後というそれなりに妥当な値が出ている。これがどう妥当かというと、45歳と言えば、男の場合25で結婚したら、15で結婚した娘の子供の顔が見られる可能性の高い年齢だ*1。実際には、結婚さえ出来る年齢まで生きていたら、悪くても50代半ばまで生きていられるであろう*2。幼児死亡率の高い、早婚の地域としてはまずまずである。
先進諸国と比べて、短いと言われながらも人生設計を立てる気になる寿命だ。山形さんは万が一エイズになっても発症して死ぬのは 10 年以上先だ。その頃に自分が確実に生きていると思えば、エイズ予防のために余計な手間もかけよう。でも、どうせその頃は死んでるだろうと思えば
というのは、マラウィなどの平均寿命が30という話*3を、20代の平均余命が10年未満と理解したのではないかと思えてくる話だ。
収入の多寡によって行動が違うのもある意味当然である。収入のある地域というのは当然、エイズがなくとも手厚い医療の恩恵にあるのだ。ワクチン、抗生剤、食糧事情etc。なにより予防に対する理解を可能とする教育。これだけ条件を揃えたポピュレーションの平均寿命が低いなんてとてもじゃないが考えられない。
じゃあ貧乏人がエイズにかかったどういう事になるんだろうか?
たくさん子供をつくることに合理性がある
ので子供は欲しい。けれどもエイズは他の性感染症とは違い母子感染のある病気だ。エイズ患者を家長に持つ家は、働き手である健康な子供を持つことが出来ないではないか。発症までの10年間の間に、子供にもHIVは伝染してしまうからだ。働き手が増えない家庭というのは無意識に選ばれた合理的な行動なのだろうかと私は疑問である。
しかしアフリカと米国は性行動の側面も、文化的な違いも大きな差はないとオスター(と山形さん)は主張する。アフリカは衛生状態が悪いから、他の性病も蔓延しているので、エイズの人たちはたいがい他の性病も持っている。多くの人の性器粘膜がふつうの性病でただれているからこそ、そこを伝って HIV も伝染しやすく、おかげでエイズの感染が極端に増えてる
なんだそうだ。
えーっと???
他の性感染症は目に見えて、発症しており明白であっても、それに対する行動は取らないという文化という事なんではないでしょうか?というか目に見えてやばい人とはゴムを付けるというのが、欧米の一般であると言うことだよね?もしくはアフリカではコンドームはエイズ対策であるという単純な宣伝のために、他の性病にも有効であるという事実が隠れてしまっているからか。
オスターの議論はコンドームの着用が男性の問題であるという視点から逃れられていない。避妊にしろ性病予防にしろ性行為の参与者全ての問題のハズだ。なぜ女性側の問題には目が向けられないのだろう?
母子感染で繁殖可能な子供を持てなくなるのに、寿命が短いとき、合理的に妙な発疹のあるペニスを生で受け入れてしまうのだろうか?エイズにならなくても明日の体調に関わってきたりするというのに。もしかしてアフリカの女性はHIVに感染しないと思ってはいないだろうか。男女比が1:1であることが特徴とされているのに(世界のエイズHIV|サハラ以南アフリカ中東・北アフリカ)。
文化的・社会的な要因はこれまでも指摘されてきた。アフリカでは相変わらず識字率が低いが、女性の場合はさらに低い。ラジオ放送などで性病についての知識を知ることもあるかもしれないが、残念ながらラジオを所有しているのは男性である。マスメディアに対する接触すら性差があるのだ。伝統的に男女の分業が進んでいるが、それは同時に格差も意味する。女性の意見がないとは思わないが、情報に対するアクセシビリティは重要な問題だ。
経済学を利用して、合理性から考える事自体否定する気はないが、基本的に考慮すべき材料にかけていて、適当に統計を並べた杜撰な研究にしか見えない。
ただし他の性感染症対策がエイズ対策でも有益であることは肯定出来る。是非、感染率の低下のために頑張って頂きたい。問題は、只でさえ医薬品に依存的で、加減を知らない人たちに種類を只増やすことが有効かどうかだろう。奥地でもキチンと処方して、耐性菌などを作らないようにする環境もまた必要だ。
なお私は、アフリカ教育系NGOゴロでないことを明記しておく。