全ての食は癌へと通ず

チキンから発がん物質−マクドナルドなどを提訴
流石サンスポ、何の検証もしないぜと思ったのだが、ちょっと調べてみた。

 食品中で最も多いのは PhIP で,最少の部類の IQ や MeIQ との濃度差は 2桁以上である.PhIP は煙草煙にも含まれ,ワインやビールにもある.罐詰のような熱処理した市販の食品からも検出されている.

 IQ の癌原性はカニクイザルでの試験で確認された.IQ 10, 20 mg/kg を週5回,強制経口投与し,27-37 か月後に肝腫瘍が触診された.病理学的には肝細胞癌であり,肺転移例も見られた.IQ の総投与量は 19.4, 22.2, 26.5 g であった.(ビーフステーキには IQ 0.02-0.36 ng/g, PhIP 9.7-49 ng/g が含まれており,これを仮に 0.2 および 50 ng/g とすれば,焼肉 250 g を摂取するとき,IQ 25 ng, PhIP 12.5 μg 程度を摂取することになる.人が 50 g のビーフバーガーを1日に5個食べるとすると,IQを 9.125μg/年,PhIP を 4.6 mg/年摂取する.70年間では,IQ 639μg, PhIP 322 mg を摂取することになる.これは上記のサルでの癌原性用量の 35000分の1である.)

(中略)

考察と結論:多くの場合,蛋白性食品の加熱によって発生する変異原性 HAA の濃度はきわめて低く,通常数 ppb の程度である.変異原性 HAA は動物実験ではすべて癌原性であることが知られている.HAA は調理で発生するので,温度や時間など調理の条件を考慮しなければならない.IARC (1993) は HAA の癌原性について評価し,実験動物での癌原性に「十分な証拠がある」ことを認めたが,ヒトに対しては IQ, MeIQ, MeIQx, PhIP の4つの HAA を決定的な癌原性物質とするには「証拠不十分」.IQ は「おそらく probably」,MeIQ, MeIQx, PhIP は「あるいは possibly」癌原性であろうとした.

要するに、記事の中で問題とされるPhIPの発ガン性は疑わしいと言うことのようだ。
カニクイザル*1を発ガンさせるのに必要なPhIP = 一日5個のビーフバーガー × 70年 × 3500
ということなので、あまり気にする必要はない。こんなことを書くと買ってはいけない系の人たちは、微量分子の相互作用が云々といいそうだが、それは証明して貰わないと分かるはずがございません。
ところで少し気になったのは、

 日本人が食品などから摂取すると思われる焼け焦げ中に最も豊富に存在するヘテロサイクリックアミンの一種であるPhIPの1日当たりの摂取量は、約10mgと推定されている。実験では、紫トウモロコシ色素を PhIP の250倍与えた群において発がん抑制が確認されたことから、比例関係がそのまま成り立つとすると、人の場合、紫トウモロコシ色素をPhIP の推定摂取量の250倍に当たる2.5mg(シアニジン-3-グルコシドで0.36mg)以上摂取することにより抑制効果が期待できると計算される。

という記事中の、日本人は一日当たり10mgという数字。この数字は前述の論文では七十年かかった量のPhIPを、たった一月で摂取することになる。もしこの文字だけ利用されるとしたなら、かなり憂鬱な事態になるだろう。たとえそのすぐ下にあるPhIP の推定摂取量の250倍に当たる2.5mgということから10mgが10μgの誤植であることがすぐに分かるにも関わらず。

*1:飼育下であることを考慮しても体重10kg前後