倶楽部:今宵、銀河を杯にして 飲み直しは何にしましょう

久しぶりのクラブ活動です。
ほってんとりを眺めていたら噴飯ものの記事があったので、批判コメントを書いたら見事に削られていたので再録ではないけれど、改めてここで批判することにする。問題は以下のもの。

ビールファン*1には常識のドイツは数あるビール消費大国の一つという事実さえ知っていれば書かない記事である。何より恐ろしいのはベルギービールを知っている上でこの記事が成り立っていることだ。ほとんどの日本人がビールの本場=ドイツだったころ、美味んぼがドライビール偽物論はそれなりに説得力があったかも知れない。しかし本場のビール=ピルスナースタイルに限らないことを、ベルギービールに触れている記者は知っているはずである。それにも関わらず、大麦麦芽とホップのみをつかったビールを本場のものとしている。
しかしよくよく考えてみれば、ビールなんてものは飲むパンとして愛されてきた大切なカロリー源でもあるのだ。シュメール文明やエジプトで飲まれていたビールとは、いわば小麦を原料にした発泡する麦かゆだったのだ。*2そのような歴史から嗜好品としてのビールが生まれ、様々な材料を使った様々なビールが各地で誕生した。
一方ドイツでは1516年、バイエルン公ウイルヘルム4世が公布した「バイエルン純粋令」以来、ビールを大麦麦芽とホップと水のみ(公布後に発見された酵母は、後で追加される)がドイツビールの基本となった。しかしその純粋令、実は小麦の過剰利用を抑制する法律であった*3。結果的に高品質なビールが造られるようになったとはいえ、別にビールの品質のための法律ではなかったのだ。
さて、以上が史的な話である。
本題に戻ろう。筆者はこう書く。

しかし、キリン一番搾りは「まじりっけなしのうまさ」と売り出し、アサヒスーパードライは「本物のうまさ」と宣伝してきたのはご存知のとおり。何を持ってまじりっけがないと言い、何を持って本物だというのか。

キリンとアサヒの宣伝手法についての批判だが全く理解できない。両者とも味覚に言及しているが、この後えんえんと続く底の浅い本場談義と無縁だ。これでもし「本場のブラウマイスターが認めたスーパードライ」という宣伝ならば問題だ。しかし現実の両者は、販売量を見れば一目瞭然で多くの日本人の喉を満足させている。
自他の味覚の違いを認めずに、権威主義的に底の浅い本場を持ち出してくるなんて、酒好きの風上にも置けない。
ちなみに私が一番好きだった銘柄は銀河高原ビールのドイツクラシックであり、次点はキリンのハートランドだ。本場云々行っておきながら、両者を冒頭で取り上げることすらしない「買ってはいけない山中登志子にビールを語る資格なぞない。

*1:マニアじゃないと厳しいかもしれないけど

*2:今でも、カロリー源として食べにくい雑穀類を発酵させて消化をよくしてから食べている地域がある。

*3:「パン小麦の確保」というのが定説のはずだけど、手元にドイツ史の資料がないから自信ない