方言

親父の実家は三河の奥地にあるずーずー弁が幅をきかせる地域であり、母は京都出身神戸育ちから名古屋に引越しという華麗な遍歴を誇るために、わが家は大都会名古屋弁もどき人が跳梁跋扈する魔界である。そのために、私個人の訛りは三河弁か変形名古屋弁か怪しい。正直に申告すると東京弁名古屋弁で、意識して名古屋弁を使わないと東京弁風に気取って話していると思われる程度の薄い名古屋弁だ。天白当たりのきついやつ*1は素では話せないし、武家町の品のいい名古屋言葉*2も無理である。ちなみに「〜〜りゃーす」「おみゃーさん」はギャグでならいえる。
そして大学に進学して京都に早六年いると、地元の人とよく話すせいもあり京都弁の素地が微妙に鎌首をもたげて、油断すると関西弁もどきになっている。その程度のエスニックアイデンティティしか持っていないわけだ。
だから、

> 天野さんは名古屋弁と番組で言っていますが正確には三河弁も入っていますよー!「名古屋弁」と「三河弁」のミックスした方言を話していました。「名古屋弁」だけでなく、もっと「三河弁」もプッシュしてください!

とかよくわからない。「じゃんだらりん」くですか?
ていうかアマチンを全国放送に出してるンか。

と激しく前フリをしておいて引っ張ってきたのはこのニュース。
ニホンザル:サルに「方言」 京都大霊長類研究所・正高信男教授「言語のルーツ確認」−話題:MSN毎日インタラクティブ
「また正高か」と辻先生に絡んで頂きたいのだけれど、それよりこのニュース朝日・読売・東京新聞(中日新聞系列。名古屋人は東京ものに弱い)にも載っていて、正高サイコーな感じであるが、うちの大学はエソロジーの電子ジャーナル版を購入しているので検索してみた。
のってねー
まぁエソロジー違いかもしれないし、号が違ってるかもしれない。
でもそれってあんまりじゃないの?
全国紙津々浦々まで正高センセーの名を売っておきながら肝心の論文は出ていない。
出ていない?
刊行されたならPrimateLit Search: Multiple Fieldsでヒットするはず。
ヒットしないってことは。
しかし、独の動物行動学専門誌「エソロジー」12月5日号とかいっときながら、実はanimal behaviourでしたとか多分ないよナー。Journal of Ethologyでもズッコケ気味。
アクセプトされただけなんだろうか

しかしこれで叩くのもなんなので、内容に注目してみると、

正高教授は、森が深い屋久島では高い声が通り、樹木が少なく開けた大平山では低音が適しているため、それぞれの方言が出来たと推測。「人間のように学習によって習得する『言語』のルーツがサルにもあることが初めて確認出来た」と話している。【奥野敦史】

あのー、鳥のsong研究でやり尽くされてますよね。地域差って。音声が変わりやすいってのはある意味常識化してませんか?
しかも生息域の特性を反映する場合、東北地方は寒いから短縮系多用とかと絡める気なんですか。
もしかしてエンリッチメントを充実させて、遮蔽物だらけにしたら変わったりするとかそういう実験系の論文だったりするんですか。
文化的側面を重視するなら、屋久島内部とか、金華山幸島でもよいですよねー。
まぁ、とりあえず実際の論文を読まないことには何とも言えないけど。
いまいち価値のわからない新聞報道*3という結論しかでないっす。いじょう

*1:語尾に「がー」「だらー」

*2:「なも」とか死語すぎ

*3:科学的にはそれなりに意味はあると思う