ロジック。技術者とおやじ。はたまた理系と文系

佐々木俊尚の「ITジャーナル」に面白いエントリーがあったのでチェック

全体を見るにはITmediaトピックス:ACCS裁判を追うをチェックすることにしよう。
ただエントリー自体は非常に長いので分けて考えなくてはならない。基本的に前半のoffice氏のあり方と後半のオタク文化についてどう考えても矛盾しているので、佐々木氏の考えを想像しながら感想を述べたい。

前半について

具体的にoffice氏の人となりを知らずに又聞きで人格を推定するのはアンフェアだが、佐々木氏の感想を元に推測するにoffice氏はさほど無茶をしていないように思われる。

まず質問に対しては、徹底的にロジカルに答えようとする。自分で組み立てたロジックに対して絶対的な信頼を持ち、そのロジックが自分のよりどころとなっている。仮に相手が感情的に攻撃してきたとしても動揺せず、あくまで自分のロジックに立てこもって攻撃に対応しようとする。だから決して挑発には乗らない。

まずoffice氏は基本的に議論をしようとしているわけではない。議論ならば落としどころを探る必要があるが、裁判において検察側はそれを持ちえない。彼は結論ありきの検察側と議論することなくロジックを展開しようという方法で裁判をしているだけではないだろうか。
そもそも今回の焦点はどこまでが不正アクセスである。明らかに不注意であることを既に彼自身認めているセキュリティイベント「A.D.2003」でのアクセス方法の公開とは違い、パスワードのかかっていないページへのアクセスの是非である。日本のというよりも法治国家の常としてもし、これが違法だとするならば様々な問題が噴出してしまう。例えばよくある上の"ディレクトリーに移る"という方法ですら、この裁判の結果将来的に違法となる恐れがある。なぜならそれによってリンクが張られていないページを見つけられたら困るという主張が通ってしまう可能性があり、正直そういうレベルでの議論を想定するとoffice氏でなくとも強硬な姿勢を取らざるを得ない。
また、極端な言い方をすれば検察側とのコミュニケーションを遮断しているように見えるわけだが、そもそも刑事裁判という場におけるコミュニケーションが、自分の意見を主張し続ける検察官vs被告という構図をとるわけで、無罪もしくはそれに近い主張をしようと思う時、なるべく論理を自分の側に置いておかなければならない。今回特に無罪を主張している以上、このような方法をとってしまうのも仕方ないのではないだろうか。

後半について

後半は近頃の若者議論をしているわけだが、明らかに自分の主張を通すoffice氏とユーザーグループのダンマリ君は違うのではないだろうか。だいたいユーザーグループも相手の論客と直に会っているのに反論を十分にやれないというのはそもそも会う資格、議論する資格がない。
それを「酒を飲んで、腹を割って話し合うのが大人のつきあい」ができないからと言って、理解できないと主張するのは相当おかしな話である。普段言えないような愚痴をお互い言い合う場所ではなく忌憚ない意見とやらをなぜ酒の席で求めるのかがわからない。あんなにわかってもらえたと思っていたのに、なんでこういう反応になっちゃうの?という言葉も人間理解をしようとした痕跡が見えない。
引用されている久保田氏の発言には、ユーザーグループの人間から言葉を引き出そうとした形跡がないので、実際のところはわからないが、ほぼ初対面の相手に酒を飲んだら分かると考えていること自体ズレているのではないかと思ってしまう。ナナシサンのコメントにもあるが政治的な結論を求める場だとしたらそれはそもそもおかしいわけである。きちんと法的な場でやってくれないといけないわけで。
で、そもそも久保田氏のいう腹を割って話し合えば分かり合えることというのは何だったんだろう。業界の立場を代表して版権*1を主張しなくてはならないACCSと、中古ゲームを安く手に入れられるという既得権を守ろうとするユーザーグループの腹が分かったとして、利用者の考える著作権料の妥当な額を知りたかっただけなのか?

*1:著作権ではない絶対に。著作権問題はそもそも版権問題から派生しているが、現行の法の理念としては必ずしもそこにはない