特定防除資材選定について

小梅さんも書いていますが農水省の見解「特定防除資材(特定農薬)指定のための評価に関する指針 別紙(pdf)(以下たんに別紙)と、環境省特定防除資材としての指定が保留されている資材の取扱い(案)(pdf)(以下環境省案)についての私の見解を上げておきます。

特定防除資材とは

別紙によれば、特定防除資材は、農業に使われる薬剤のうち、

  1. 病害虫や雑草に対する防除効果又は農作物等の生理機能の増進若しくは抑制の効果 =薬効が確認されること
  2. 農作物等、人畜及び水産動植物への安全性が確認されること

という要件がついています。

しかしここで考えないといけないのは、農業に必要なものは「人と作物(種や苗)と(特定防除資材を含む)農薬」だけではありません。ばかばかしいと思うかもしれませんが、少なくとも

  • 農具
  • 肥料
  • 植え付け

が必要となります。「なぜそれが今問題になるの?」、と思われた方もいると思われますが、実は特定防除資材の選定に際し、これら三点もひっくるめた形で議論が行われたからです。まず農薬取締法を見てみましょう。

第一条の二  この法律において「農薬」とは、農作物(樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という。)を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルス(以下「病害虫」と総称する。)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤(その薬剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む。)及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO082.html

強調部分を読んでください。これってそのまま読んだら肥料系も含まれてしまうかもしれないと思いませんか?もしくは経験的に肥料自体の二次的な効果で防除効果を期待しているとされたらどうなるんだろうとおもいません?

(まぁ正直農家が、登録農薬ではない、自家製農薬・自家製資材・疑義資材を使っていているという現実があるからこそ、こういう問題がでてくるのですが)

つまり畑を構成するもの全ての安全性と実効性が、初期状態で問題になったと言ってもよいでしょう。ハーブ類を混植することでアレロパシーや虫の忌避物質を畑に機能させることや、畑に黒いビニールなどでおおい、土を乾燥させたり、殺菌したりすること、CD−Rをおいて鳥避けにすること、チェーン除草機などを使うことによって金属イオンが結果的に畑に散布されること、生ゴミを堆肥にして畑にいれるときの問題点、米糠などの地質改良材などなど。こういった各地の農家の安全性についての疑問点が恐ろしくも雑多な形でパブコメとして投げられ、それが環境省案のリストのもとになりました。

たしかに光学的農具であるCD−Rや、黒ビニールシートは”薬剤”ではありませんが、多くは化学的な実態を伴う資材であることにはかわりません。

しかしながら、賢明なのかは微妙ですが農水省はそこまで根源的な問い立てに取り組むことまではしませんでした。特定農薬の制定において問題になったのは、あくまで、防除資材として有効で安全なのかという二つの要件を満たすかどうかでした。

確かに全ての敢行を安全性が科学的に証明されるまで保留せよと言い出したら農家は一切のことが出来なくなりかねません。慣例で何の気なしに田んぼに撒いていた米糠を、事業ゴミで出せと言われたら困りますね。

農水省がしたのは、特定防除資材=薬剤として使えるかもしれないもの=区分Aの安全性と薬効をまず検討するというスタンスでした。薬効はともかく安全性について本当に議論がされたのか不明なものとあからさまに危険なものとして保留資材以外の区分として区分Cをつくり、原則使用禁止。機能がないものは安全ではないこともないだろうということで、C−1という区分にいれ、おまじないとして使いたいのなら黙って使えというカテゴリーに

そういうわけで別紙に収録されたのは安全ということではないのです。”III 指定に係る手続 1 特定防除資材の検討対象とする資材の範囲”によれば環境省案の区分Cには

  1. 原則として化学合成された物質であるもの(食品を除く。)
  2. 抗生物質
  3. 天敵微生物(弱毒ウイルスを除く。)
  4. 有効成分以外の成分として化学合成された界面活性剤等の補助成分が入っているもの
  5. 食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)第1食品の部A食品一般の成分規格の5、6及び7において食品の成分規格が定められている物質が有効成分であるもの
  6. 毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号)において毒物、劇物又は特定毒物

として定められているもの

と農薬に含まれないもの=肥料や一般的な資材、食品(参考;食品由来の資材の扱いについて(案))、で構成されています。ちなみに区分C−1であっても、後の議論によって、農取案件行き、つまり普通の農薬扱いに差し戻しのものがあります。例えば、72)硫黄(74)クレオソート(クレゾール) (75)ジベレリン (76)消石灰 (78)ナフタレン(79)生石灰 (80)ホウ酸 (83)硫酸銅 (84)塩化ベンザルコニウム (85)塩基性塩化銅 (86)灯油など(「特定防除資材(特定農薬)の指定が保留されている資材の取扱いについて(案)」に関するご意見・情報の募集に関する結果について(案)(PDF:88KB))。

さて、個人的には区分Cはどうでもよいと考えています。意味ないけど使わないと調子狂う的な位置づけのものはあっても誰も気にしません。やはり問題は区分Aです。これは安全性が実際に問題になっており、それ以上に薬効が本当にあるのか、「危険で意味のない」農業資材が業者によって喧伝されていると思うと腑が煮えくり返ります。